「唯くんっ!」
叫んだ私に振り向いた唯くんは私を視界に捉えた瞬間目を見開く。
そんな唯くんに駆け寄って抱きついた。
「翼⋯?」
「ごめん!ごめん唯くんっ⋯わたし、私っ!」
「翼⋯いきなりどうし、」
「エリーから全部聞いた」
「⋯っ!」
「ごめん唯くん!私⋯話も聞かずに裏切られたって勘違いして⋯」
「アイツ、全部言ったのか?」
「うん⋯聞いた。全部全部聞いた」
私がそう言えば唯くんは小さな舌打ちをした後、一旦私の身体を離し向かい合った。
「謝るのは俺の方」
「なんで⋯」
「突然の事とはいえ避けられなかった」
「それは!」
「翼が不安がると思ってすぐに話さなかったのも俺に非がある」
「⋯、」
「あの日、翼のキスを拒んだのも、沙弓とキスしたのに翼とキスなんて出来なかった。疚しい気持ちがあったわけじゃないけど沙弓とキスした俺がって後ろめたい気持ちがあったから」
「うん⋯」
唯くんは唯くんであの時葛藤していたんだ。
それは私の為でもあって⋯。
私とキスしたくない訳じゃない事がわかり安心したけどそれを聞いて何も唯くんの気持ちを汲み取れなかった自分が情けなくなる。
いつもいつも悪い方向にばかり考えちゃう。



