空き教室に沙弓ちゃんを呼び出して向かい合う。
「翼ちゃん⋯どうかしましたか?」
「沙弓ちゃん」
「⋯?」
「唯くんと⋯」
「⋯」
「唯くんと⋯、」
「⋯」
「唯くんとキスしたって本当?」
僅かに震えた声がバレないように強く沙弓ちゃんを見つめる。
「ねぇ、本当なの?」
「⋯」
「何か言ってよ!」
何も言わない沙弓ちゃんに苛立ち口調が強くなる。
すると沙弓ちゃんは私から目を逸らしポツリと呟いた。
「唯から聞いたんですか⋯」
その言葉を聞いてガラガラと自分の中の何かが崩れていく音がした。
そんな言い方⋯肯定したも同然じゃんか。
それでも何とか冷静さを取り戻そうと必死に平静を装う。
「違うけど⋯そういう話をたまたま聞いて⋯キス、したの?」
「⋯」
「沙弓ちゃん!」
冷静になれなかった私が叫ぶと身体をビクつかせせる沙弓ちゃんにまた1つプツン、と怒りが込み上げた。



