戯れ、ランデブー。 【完】


そっと息を潜めて水道のある方から聞こる声に意識を集中させる。



「唯と伊藤さんの話って?」

「実はぁ⋯、タエから聞いた話なんだけど」

「なになに?」

「昨日保健室で二人がキスしてたって!」



「⋯っ!」



「ええぇ!?マジ!?」

「マジマジ。何か先生がいなくて、タエがベッドで休んでたら二人が来て、キスしてたのが見えたって!」

「うーわ、何それ!?ていうか唯って彼女居るじゃん!」

「翼でしょ?でもタエが言うには絶対キスしてたってさぁ⋯」



聞かなきゃ良かった。

なんてもう遅い。


聞いてしまえばその記憶を消すことなんて出来ないんだから。


早く立ち去れば良かった、なんて今更だ。