「翼」

「!唯くん⋯待っててくれたの?」


沙弓ちゃんが教室を出て少ししてから私も下駄箱へと向かうと廊下の壁に寄りかかっていた唯くんが私に気づいて片手を上げる。


「沙弓と話出来た?」

「うん⋯沙弓ちゃんは私を責めなかった⋯」

「そうか」

「うん⋯」


むしろ優しすぎて戸惑うくらいだ。


「そういえば唯くん、沙弓ちゃんに言ってくれたんだってね」

「ん?」

「私が助けようとしてたって」

「ん、あぁ。余計なお世話かもしれないけど事実は伝えた方がいいだろ」

「⋯ありがとう」


私があの時考えてしまった事は消せない。
逃げようとした事は変わらない。

例え許されたとしてもチクリとした痛みはきっとずっと胸に残り続けるだろう。