戯れ、ランデブー。 【完】

「沙弓のことは大事だけど、俺は翼の方が大事」

「唯くん⋯、」

「きっとさっき翼が沙弓と同じようにアミたちに囲まれてたら真っ先に翼の方に行った」

「⋯っ」

「何より一番大切なのは翼なんだよ」


私の手を握りながら、私の目を真っ直ぐ見ながらそう言った唯くんの瞳に嘘はない。


「でも、沙弓のことで翼がそんなに苦しんでるなんて思ってなかったから⋯悪かった」



思えば唯くんが私より沙弓ちゃんを優先した事はなかった。

雨の日だって家の方向が同じだからっていう合理的な理由だったのかもしれない。

合コンの時だって私の事を考えて沙弓ちゃんに注意してくれた。


沙弓ちゃんだけじゃなく、他の女のことだって私が嫌だと言えば気をつけてくれたし、唯くんから他の女に媚びるなんて一切なかった。

きっと唯くんと私は感性や思考が全然違って⋯だからこそ惹かれたのかもしれないけどそれがすれ違いの原因になる事もあって。