「逃げてきたの?」
「逃げてきたっていうか⋯」
「逃げてきたんでしょう」
「まあ、そうなるよねぇ⋯」
はははっと笑ってみても虚しい。
二人は私がその場から離れた事に気付いてないみたいに未だに会話を続けてるし⋯。
「唯くんの馬鹿野郎⋯」
「何それ言えてる」
「唯くんのこと悪く言うな」
「自分で言ったんでしょうが」
「それはそうだけど⋯」
「まあ分かるけどね。彼氏に仲の良い女がいるのが気に食わない気持ち」
“気に食わない”といえば私の心が狭く聞こえるけれど実際そうなんだろう。
唯くんは誰とでも分け隔てなく接するから周りには人が集まる。
それは男女関係なく、だ。
だから仲の良い女の子がいたって私がとやかく言うことじゃないのかもしれない。
今どき女友達は作らないでなんて言う人いないし。
だけど、だけど。
問題はそこじゃないんだ。



