「俺の?」 「家は隣同士だし何も問題ないじゃない」 「狭いだろ」 「大丈夫だよ。それにそうじゃないと私雨が止むまで帰れない⋯」 縋る様な表情で、唯くんの袖を掴む沙弓ちゃんにグッと黒いものが込み上げだ。 勝手に触らないで。 そんなウルウルした顔で見上げないで。 近くのコンビニかどこかで傘くらい買っていけばいいじゃん。 そんな最低な考えさえ浮かんでくる。 「お願い、唯⋯」 断って欲しい。 せめて、唯くんの傘を沙弓ちゃんに渡して私といる事を選んで欲しい。