「き、木波くん…!」

 意を決して木波くんを呼ぶ。

 「…ん?」

 思いのほか優しい声に胸がキュンとなる。

 「これ、よかったら…どうぞ…」

 そう言えば、数秒の静寂の後に

 「ありがと」

 という声と共に手から僅かな重みが消えた。

 パッと顔を上げれば、クッキーのラッピングをつまんだ木波くんがいた。

 嫌そうな顔じゃないことにホッと胸を撫で下ろす。