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「──ただいま、ミア。いい子にしてたかな?」


 魚のお土産片手に自宅へと帰ってきた僕は、部屋の片隅に座っているミアを見つけるとニッコリと微笑んだ。
 どうやら、今日は大人しく留守番をしてくれていたらしい。悪戯された気配のない室内を見渡すと、優しく微笑みながらミアの頭を撫でてあげる。


「いい子だね、ミア」


 それに機嫌を良くしたのか、頭をくねらせたミアは僕に向かって小さく声を上げた。
 今すぐに構ってあげたいのは山々だけれど、まずはトイレ掃除をしてあげなければならない。それが終われば、次はミアの夜ご飯の準備だ。
 これが、僕の毎日のルーティン。


「ちょっと待っててね」


 そう声をかければ理解したのか、ちゃんと静かに待っている様子のミア。そんな姿がとても可愛いくて、トイレを片付けながらも思わず鼻歌が零れる。


「今日はね、ミアの好きな魚を買ってきたんだよ。食べやすいように(ほぐ)してあげるからね」


 トイレ掃除を無事に済ませると、そのままウキウキとした気分でキッチンへと向かう。
 本当なら今すぐにでも堅苦しいスーツなど脱ぎ捨てたいところだけれど、可愛いミアを待たせるわけにはいかない。他のどんなことよりも、まずはミアのお世話が優先なのだ。


「ほら、魚だよ。今日はいい子だったね」


 そう告げながらミアの足元にお皿を置くと、喉を鳴らしてピチャピチャと食べ始めたミア。その姿は、本当に愛くるしい。
 可愛いミアの姿を充分に堪能し終えると、僕はやっとスーツを脱ぎ捨てると部屋着へと着替えた。

 帰宅途中で買ってきた弁当をテーブルの上に広げると、足元に横たわるミアの身体を撫でながら夕食を食べ始める。


「後でお風呂に入ろうね、ミア」


 ミアの身体が少し汚れていることに気付いた僕は、箸を進めながらも優しくミアの身体を撫でた。『お風呂』という言葉を理解したのか、僕の手をすり抜けると部屋の隅へと身を寄せたミア。どうやら、相変わらずのお風呂嫌いなようだ。
 暴れるミアをお風呂に入れるのは本当に大変だけれど、汚れをそのままにしておくわけにもいかない。今夜も躾に苦労しそうだ。
 そんなことを思いながらも、ミアのお世話をするのが楽しくてフフッと声を漏らす。