「どういうコト!?」

 何をして「やっぱりね」なのかに気付けなかったメティアが、三つの燃えカスを見下ろして問う。

「微かに香らない? 甘い花の蜜のような……一枚目にこの匂いはなかったわ。でも二枚目と三枚目には同じ香りがしたの」

「……確かに……(ほの)かに残り香がするわね」

 言われてクンクンと鼻から強く息を吸い込んだメティアも、ようやく納得したようだった。

「でもこんなの偶然じゃないのか? 同じ店の商品だったんじゃ……」

「ううん、違う。レインが使ったのは、リムナトの王族のみが使うことを許された書簡箋(しょかんせん)よ……昔レインが燃やして教えてくれたのを、今思い出したの」

「それじゃ、ナフィル兵の振りをして店主に近付いたのは──!」

 ──間違いなくリムナト王家の誰か、もしくはその誰かに指図された家臣や下僕たちだ。

 その前夜に兵たちを捕獲したとあらば、彼らが店主と落ち合う約束の場所も、アンたちの所在もおのずと知れよう。

 そしてレインも侍従から二通目を手渡された時点で気付いたのだろう。

 あの一瞬、レインが表情を変えたのはそういうことであった。