というのも大勢での移動はどうしても目立ってしまうからだ。
計画通りであれば、既にパニとフォルテはパン屋の入り口から親子と装って、大量のパンを抱えて出ていった筈である。実際にはパンと見せかけた旅の荷物であるが。
小一時間もすれば陽が暮れるので、店主が友人と酒場へ出掛ける振りをして、残りの侍従と出ていく予定だ。
そちらは大して搬送出来そうもないので、ルーポワへの往復十名分という大荷物の殆どは、屋根裏部屋に置いていかざるを得ない。が、それも店主への謝礼と思えば安いものだ。
「はぁ~! この終わりのない騒音に、そろそろあたいの気も狂いそうだわ。これが風車小屋だったら、風が止まれば静かになるのに~」
徐々に赤みを含んだ光の差し込む水車小屋で、メティアは両掌を耳に押し付け、とうとう弱音を吐き出した。
「静かになったらこうしてお喋りも出来ないでしょ? 音の波長も一定であるのだから、子守歌と思えば心地良いじゃない。小麦の挽かれた匂いも芳しいし、音のない屋根裏部屋に比べたら天国だわ」
対してアンは地べたに腰を下ろし、抱えた膝に乗せた小首を傾げて、メティアにニッコリ笑ってみせた。
「辛抱強いお姫サマだこと。だからってそんな硬い板っぺらにしゃがみ込んでたら、そのうち尻が痛くなっちまうよ。ほれ、その袋に腰掛けな。少しはマシだ」
そう助言するメティアはと言えば、三段に積まれた麻袋にドッカリと腰を据えている。
おまけに一袋を壁に立て掛けて、背もたれまで設えるなどやりたい放題だ。
計画通りであれば、既にパニとフォルテはパン屋の入り口から親子と装って、大量のパンを抱えて出ていった筈である。実際にはパンと見せかけた旅の荷物であるが。
小一時間もすれば陽が暮れるので、店主が友人と酒場へ出掛ける振りをして、残りの侍従と出ていく予定だ。
そちらは大して搬送出来そうもないので、ルーポワへの往復十名分という大荷物の殆どは、屋根裏部屋に置いていかざるを得ない。が、それも店主への謝礼と思えば安いものだ。
「はぁ~! この終わりのない騒音に、そろそろあたいの気も狂いそうだわ。これが風車小屋だったら、風が止まれば静かになるのに~」
徐々に赤みを含んだ光の差し込む水車小屋で、メティアは両掌を耳に押し付け、とうとう弱音を吐き出した。
「静かになったらこうしてお喋りも出来ないでしょ? 音の波長も一定であるのだから、子守歌と思えば心地良いじゃない。小麦の挽かれた匂いも芳しいし、音のない屋根裏部屋に比べたら天国だわ」
対してアンは地べたに腰を下ろし、抱えた膝に乗せた小首を傾げて、メティアにニッコリ笑ってみせた。
「辛抱強いお姫サマだこと。だからってそんな硬い板っぺらにしゃがみ込んでたら、そのうち尻が痛くなっちまうよ。ほれ、その袋に腰掛けな。少しはマシだ」
そう助言するメティアはと言えば、三段に積まれた麻袋にドッカリと腰を据えている。
おまけに一袋を壁に立て掛けて、背もたれまで設えるなどやりたい放題だ。


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