見れば口元を片手で隠し、もう片方でお腹を押さえたアンが、必死に笑いを(こら)えている。

「姫さま……?」

 やっと目を覚ましたフォルテも、パニの膝の上で首を(かし)げた。

 ついにはクスクスと笑い出してしまった姫を見詰めて、三人は唖然と沈黙した。

「ご、ごめんなさい! 二人の掛け合いがとっても微笑ましくて……あたしにも姉弟(きょうだい)がいたら、こんな風に喧嘩が出来るのかしらって……」

「内容がちっとも微笑ましくないんですけどー」

 呆れたようにアンを横目に捉えたメーは、それでもようやく燃え盛る炎を治めてくれたようだった。

 腕を組み直して一番近い椅子にドッカリと腰掛け、腰巻からむき出しになった太ももを色っぽく絡めてみせる。

「あんた、ちっとも(こた)えないのね。あたいがレインとイチャイチャしてるって自慢してるのに」

「信じていますから」

 笑いを噛み殺したアンもまた、両指を胸の下で絡めて落ち着いた笑みを宿す。

 パニは緊張の面持ちで二人の対局を見守り、対してようやくこの状況を把握したフォルテは、「姫さまに「あんた」とは!」と、今にもがなり立てようという寸前だった。

 だが、動じる気配もないアンの安穏(あんのん)さに、心の声を音声にすることは出来なかった。