以前のレインさながらに愛嬌のあるウィンクを決め、アンは頬に掛かったレインの髪を寄せてやった。

 途端その毛先から金色の粒子が辺りに散らばった。

『本当に天使さまになっちゃったのね……』

『君はまるで天から舞い降りた女神のようだったよ』

 レインの掌もアンの頬に触れ、アンは刹那にその頬を赤らめた。

『は、恥ずかしいから、あんまり見ないで……』

 長い黒髪がその身を包み込んでくれているが、アンが何も纏っていないことは明らかに見て取れる。

 俯きがちに瞳を逸らしたアンの背に、レインは両腕を回して抱き寄せた。

『ごめん……でも、本当に綺麗だ』

『ありがとう、レイン。ずっと……ずっと守ってきてくれて』

 水中での口づけも地上で何度も交わした接吻と変わらず、お互いの唇は熱を感じた。

 と同時に、レインの全身が髪から漂う金粉に覆われて、やがてそれは彼を覆う衣服と共に消え去った。

『どうやら神は僕たちに「時間」を与えてくれるらしい』

『え?』

 まだ理解の出来ぬアンの身体を、今一度優しく抱き締める。

 初めて知るお互いの肌のぬくもりに、二人はとろけて泉の水に溶け込んでしまいそうだった。