アンは心から願っていた。

 レインの考えは間違っていないと感じたからだ。

 彼の意向を尊重したかった。

 レインはイシュケルを信じていた。

 屋根裏部屋のアンを訪ねた折、イシュケルが黒幕の一人であることに気付いても、アンにそれを知らせなかったのはそういうことだ。

 彼はイシュケルがそうせざるを得ない理由を知り、アンに気付かれる前に解決したかった。

 だからこそレインはアンと兵たちの落ち合う場所を変えることなく、また二手に分けた帰国のルートも変更しなかったに違いない。

 きっとレインは夜までに全てを治め、イシュケルも共にナフィルへ帰したかったのだとアンは思った。

 レインはイシュケルを苦しみから解き放ちたかった。

 彼はイシュケルに対して、負の感情など生み出すことはなかったのだ。

 アンはイシュケルの肩から手を放して、スウルムに向き直り背筋を正した。

「叔父さま、どうかお教えくださいませ。「風を継承する者」にレインとあたしを選んだ訳を」