「何を……言っているの……?」

 しばらくの間アンはもちろんのこと全員が言葉を失ったが、沈黙した空間は震えるアンの声によって再び音を取り戻した。

「僕は……もう君を守ってあげられない。だけど、この泉に、身を沈めれば……」

「守ってなんて! いいの……あたしのことなんて……だからお願いっ、この泉は傷を癒してくれるのでしょ? あたしはどうしたらいいの? 何をしたらいいの? 教えて……貴方の怪我が治るなら、あたしはっ──」

「アン……」

 アンの必死な問いかけは、レインの眼差しと交差した途端に継げなくなった。

 いつも以上に優しい瞳。

 レインはその視線を外さぬまま、もう一度メティアに話しかけた。

「メティア、君は気付いてるんだろ? 僕の身体に触れたのだから。折れた肋骨が、内臓を傷つけてしまった……幸い肺には刺さらなかったから、呼吸も会話も出来ているけれど……骨は今でも刺さったままだ。……アン、泉の力で、傷はいつか癒えると思うよ。でも刺さった骨は……戻らない。骨の刺さった部分は、治らない……だからこのまま死を待つのなら、僕は最善の道を選びたいんだ……」

「あっ……」

 アンは真正面のメティアを見上げた。

 同じくアンに目を向けるメティアの表情は(かたく)なだった。

 それはレインの告げた状態が、真実であることを意味していた。