◇水嶺のフィラメント◇

 弾丸は刀身を砕きながら襲いかかる家臣の眉間を貫いた。

 同時にイシュケルが背後で構える狙撃手を、更に残った剣使いを──彼らの喉元を見事な剣捌(さば)きで掻き斬る。

 鮮血がほとばしり、紅い霧が宙を埋め尽くす。

 そのヴェールのこちら側で立ち上がったメティアも、ネビアを介抱する男二人を金色の短剣(ナイフ)で鮮やかに仕留めた。



 残るは喘(あえ)ぎながら地面をのたうち回るネビア独りのみ──。



『ニテ イ リト ティ トゥウダ』──リムナト周辺の言語で「自分の罪に抗(あらが)え」という意味だ。



「自分(ニテ) の(イ) 罪(リト) に(ティ) 抗え(トゥウダ)」

 ネビアは自分の犯した深い罪に、おのれの首を締め上げられていた。



「ネビアさま……どうか悔い改め、罪を償(つぐな)うとお約束ください」

 イシュケルは依然苦しそうに唾(だ)液を垂れ流すネビアの頭上に立ちはだかった。

「うあっ、んんっ! ひっ……ひやぁだっ!! あううっ……うー!」

 首を掻きむしりながらネビアは言葉にならない言葉を発したが、その内容と目つきと態度は……明らかに反発を示していた。

 血を滴(したた)らせたイシュケルの剣が、ゆっくりと持ち上げられ再び天を仰ぐ。

 それは閃光の如く空気を斬り裂き──ネビアの背に衝(つ)き立てられた。

「地獄で我が身を省(かえり)みられよ」

 剣を一振り、濁った血液を振り払うイシュケル。

 それでも遺骸に向けて一度目を伏せたのは、ネビアへの弔(とむら)いであったのだろうか。