「或る日スウルムは忽然と消えたんだよ。それも大切な儀式の前日にだ。儀式の主役はアン王女、あんたの母上サマのご予定だった。が、弟であるスウルムは、意外にも結構な「姉上想い」だったらしい。だから事前に「生贄」をクレネにすり替えて、姉君を救って差し上げたのさ」
「いけ……にえ?」
「違う……ネビア、それは誤解だ……その、儀式は──」
「うるさい! 従弟殿の言い訳は後回しだ。俺こそが真実さ……なぁ、イシュケル」
矢継ぎ早に進められてゆく展開に、アンとメティアは全てを呑み込めなかった。
浅い息遣いを続けるレインの弱々しい反論も、ネビアの一喝に跳ね返されてしまう。
「むか~しむかし、この地は神の怒りに触れたんだとさ。それから何十年だか置きに王は湖に生贄を捧げてきたんだそうだ。知らなかっただろ? 俺も知らなかった。何故ならこの伝承はどこの文献にも残されていない。全ては王家の一部に口伝えで継がれてきたらしいからな。湖の恩恵を受けるリムナトとナフィルは、交互に生贄を用意した。その条件は……両王家の血を継ぐ生娘に限られるんだそうだ。そうして選ばれたスウルムの姉君は、疑いようもなくナフィル王家のお姫サマであったワケだし? イシュケルもリムナト王家の親族である奥方を迎え入れて、つまりクレネも王家の血を継ぐ娘だったわけだ」
「いけ……にえ?」
「違う……ネビア、それは誤解だ……その、儀式は──」
「うるさい! 従弟殿の言い訳は後回しだ。俺こそが真実さ……なぁ、イシュケル」
矢継ぎ早に進められてゆく展開に、アンとメティアは全てを呑み込めなかった。
浅い息遣いを続けるレインの弱々しい反論も、ネビアの一喝に跳ね返されてしまう。
「むか~しむかし、この地は神の怒りに触れたんだとさ。それから何十年だか置きに王は湖に生贄を捧げてきたんだそうだ。知らなかっただろ? 俺も知らなかった。何故ならこの伝承はどこの文献にも残されていない。全ては王家の一部に口伝えで継がれてきたらしいからな。湖の恩恵を受けるリムナトとナフィルは、交互に生贄を用意した。その条件は……両王家の血を継ぐ生娘に限られるんだそうだ。そうして選ばれたスウルムの姉君は、疑いようもなくナフィル王家のお姫サマであったワケだし? イシュケルもリムナト王家の親族である奥方を迎え入れて、つまりクレネも王家の血を継ぐ娘だったわけだ」


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