「お膳立てとはどのような……」

「おやじとの会話を盗み聞きしてやったのさ。お前はおやじにそそのかされて、ずっとナフィルで裏切り者の登場を待ってたんだろ? なのにいつまで経っても奴は現れなかった。そりゃあそうだ、奴はナフィルにもリムナトにも近付かずことなく生きてきたんだからな! だから俺がちょいと裏で手を回してみたわけさ。レインの動向を調べりゃあ、そこそこ辿り着けることだったのによ。なぁ、我が自慢の従弟(いとこ)殿!?」

 ネビアはまるで歌劇の如く、大仰な仕草と共にイシュケルとレインを(あざ)笑った。

 彼の台詞からアンが読み取れたのはたった一つだ。

 イシュケルは「裏切り者」を見つけるために、身元を隠してナフィル王家に潜入した。

「もしや……? レインさまがスウルムと密通しているとの情報は……ネビアさまがお流しになられたと!?」

 ──スウルム?

 アンはその名に僅かに反応した。

 いつのことであったか、どこかで聞いた気がしたからだ。