◇水嶺のフィラメント◇

「どけっ、パニ! ……ちくしょう、こんなに入り乱れてちゃ銃も使えん!」

 ようやく加勢の準備が出来たリーフも、状況を呑み込んでパニの後ろで舌打ちした。

「リーフ……理由は分からないけど、標的はボクみたいだ。だからボクが(おとり)になる。出来るだけみんなを斜面側に押し倒すから、その隙を狙って撃って!」

 パニはリーフに背を向けたまま、後半声高に叫んだ。

 握り締めた拳が肩を(いか)らせて、今まで優しさに包まれていた少年のオーラを、迫力すら感じさせる強い波動に変えていく。

「パニ……わ、かった。気を付けろよ!」

 その不思議なエネルギーに度肝を抜かれ、リーフの言葉は一度途切れたが、彼も覚悟を決めたのだろう、パニの左肩越しに銃身を真っ直ぐ伸ばして、少年の言うその時を待った。

「こう見えてもメーのパートナーだからね。大丈夫! じゃあ行くよ!!」

 傾げて見せた片目でウィンクをして、パニは瞬間重心を落とし俊敏に駆け出した。