4月下旬。





私、白石紗良はさくらのすっかり散った駅前をぼんやりしながら眺めていた。


駅前の人を眺めていたと言っても、人生の意味などという大層な悩みがあるわけでもなく、ただ大切な親友を待っていただけである。





「あいなちゃんおはよう」

「さら、おはよ」


待つこと5分弱。

手を振りながらこちらに歩いてくる親友を笑顔で迎える。



親友こと、沢谷藍那は身長165㎝のスレンダーな美人。

100人中100人が美人と答えるであろう美貌の持ち主なのに、バスケに熱をあげすぎて本人はあまりルックスを自覚していない。

でも、今のままでも十分可愛いからやっぱり美人は得をしていると思う。




2人並んで双葉高校に向かって歩き出す。

あいなは「今日の英単語範囲どこだか知らないんだよね」とか言ってる割に、焦る様子もなくカラカラと笑っている。

いつでも余裕ある雰囲気は一緒にいて心地良く、思わず一緒にニコニコしてしまう。






「今日もまた、たくさん名前間違えちゃうんだろうなぁ…」


「さらの名前の覚えられなさは、一周回って才能だよ」


「お願いだから他人事として話さないで…心折れちゃう…」


「そうだねそうだね。
そろそろ林にキレられてもおかしくないんだから、気をつけなよ?」