「原くん、原くん、委員会の集合場所なんだけど…」
「ふざけてんの?俺の名字、林なんだけど」
「わわわ、ごめんね。決して悪気があるわけではなくて…」
そんな会話を繰り広げること計5回。
ピリピリしていた彼もどうやら諦めたらしい。
「あの!森くん!日直だから黒板掃除しろって先生が…」
「名字、林ね。掃除はちゃんとやるから」
苦笑気味に返された瞬間、お昼休みだった教室がざわついた。
なぜなら誰も彼の真顔以外見たことがなかったから。
どうやら私の名前を覚えられない能力は、孤高の彼の笑いを引き出してしまったらしい。