そんな不思議な関係だ。


会話がなくても、まるで空気のようで、そばにいても気にならない。


それに2人でいると、一之瀬くんはいろんな表情を見せてくれる。

普段教室じゃ見せないような、笑った顔や驚いた顔を。


少しずつ一之瀬くんの新しい一面を知れるような気がして、だからわたしも自然とここへきてしまうのだろう。



「そろそろ終礼の時間だよね?一之瀬くん、教室戻る?」

「ああ。向坂が戻るなら」


わたしと一之瀬くんは6限が終わろうとする頃、いっしょに屋上を出た。


もしかしたら、一之瀬くんはこの学校で唯一の『友達』と呼べる存在なのかもしれない。

一之瀬くんは、わたしのことなんてなんとも思っていないだろうから、わたしがただ一方的にそう思っているだけだけど。


そんなことをぼんやりと考えながら、屋上からの階段を下りていた。