「そっか。すっごくいい人じゃん!大切にしなよ、慈美!」

「う…うんっ」


由奈の言葉に、わたしはぎこちなく笑った。


正直、まだ万里くんのことを『好き』という感情は芽生えていない。

わたしによくしてくれる、『親切な人』…という感覚だから。



結局由奈からは、失くした記憶に関することは聞けなかった。

でもわたしたちは、日が暮れるまで他愛もない話をしたのだった。


久々に、こんなに笑った気がした。

以前から、由奈以外の前では笑う機会は少なかったし、記憶を失くしてからはさらに笑顔が減った気がしていたから。



新しい学校に友達がいなくたって、わたしには由奈がいる。

由奈はわたしの一番の友達で、たった1人の大切な親友。


その関係はこれから先もずっと続くと、わたしは信じて疑わなかった――。