緊張で、バクバクとうるさく鳴る鼓動。

由奈が言葉を発するまでのこのわずかな時間さえも、とてつもなく長く感じた。


固唾を呑んで待つわたしに、由奈はフッと笑った。


「…本当に覚えてないんだっ。あれだけ想い合っていたのに」


由奈のその言葉を聞いて、もやがかかっていたわたしの視界が、一瞬にして澄み渡ったような気がした。


…『想い合っていた』。


ということは、やっぱりわたしたちは――。



「慈美から『付き合ってる人がいる』って聞いたのが、中3のとき。それが、彪雅だったの」

「わたしと一之瀬くんは、2年も前から…」

「そうだよ。あたしがしつこく聞いて、ようやく慈美が話してくれたの。で、そのときに2人で写る写真も見せてもらって」


おそらくそれが、スマホに残されていた写真のことだ。