だから、それは彼氏である万里くんが、記憶を失くす前にわたしに言ってくれたものとばかり思っていたのに――。



「…『なにがあっても愛し抜く』」

「は?なんだよ、それ」

「これは…、万里くんが言って――」

「そんなくせぇセリフ、オレが言うわけねぇだろっ。恋愛ドラマの見すぎなんだよ」


万里くんは、バカにしたように鼻で笑っている。


その態度に、愕然とした。

…だけど、同時に確信した。


あの言葉をわたしにかけてくれたのは、万里くんではないのだと。



「とにかく、オレは別れる気はねぇからな。慈美にふさわしいのは、このオレだ!」


万里くんは指さすように、タバコの先端をわたしに向ける。


「とりあえず、今回は許してやる。だから、どこのどいつかは知らねぇが、とっとと忘れることだな」