万里くんに打たれたのだと。


「…ハァ、…ハァ。オレだって、本当はこんなことしたくねぇよ。でも、慈美が寝ぼけたことを言い出すから、…ついっ」


…衝撃的だった。

今までわたしに優しくしてくれた万里くんに、…こんな一面があったなんて。


でも、怒らせてしまったのは…わたし。

打たれたって、おかしくないのかもしれない。


「…ごめん。突然こんな話なんてしたら、わたしのこと…憎くなっても仕方ないよね」

「…憎い?なに言ってんだよ。オレは慈美のことが好きだから、こうしてるんだよっ」


好きだから、…打つ?


その言葉の意味が、わたしにはよくわからなかった。


――だって。


『なにがあっても愛し抜く』


わたしが、失くした記憶の中で覚えている…唯一の言葉。

これは、大切な人がわたしにかけてくれた言葉だ。