わたしの部屋にやってきた万里くんとの間に、ピリピリと肌に突き刺さるような殺伐とした空気が流れる。



――今から、数分前。


「万里くんには、これまで本当によくしてもらったんだけど…。…ごめん、別れてほしいの」


わたしの唐突な言葉に、一瞬ポカンとした表情を見せる万里くん。


「…は?別れる?なんで?慈美が前にキスを拒んだからって、そんなので別れるほど、オレたちの絆はヤワじゃないだろ?」

「そうじゃないのっ…」

「じゃあ、なんだよ?」


万里くんは、まるで噛みつくように言葉を被せてくる。


明らかに、いらだっていることはわかっていた。

だからって、言うのをためらってはならない。


「万里くんは、わたしが記憶喪失になる前から、ずっとわたしの彼氏だったことはわかってる…。わたしも、そう思うようにしてた」