わたしとのキスが、懐かしい…?


その言葉の意味は、よくわからない。


だけど、わたしも一之瀬くんと同じように、もし1つだけ言葉を選ぶとするのなら…。

なんだか、『懐かしく』感じてしまったのは確かだった。


万里くんとのキスは拒んでしまったけど――。

一之瀬くんとは、抵抗なくできてしまったことに驚いた。


それに、全然イヤじゃない。

このままずっと、思いのままにキスしたいって。


そう思ってしまったんだ。



そのとき、真っ暗だった部屋に明かりが戻る。


色を取り戻したわたしの視界には、頬を赤らめて少し熱を帯びた色っぽい目をした一之瀬くんの表情があった。


わたしも、息が上がっていて顔が熱い。


そんなわたしたちは、無言のまま見つめ合う。


このときばかりは、なにも言葉は交わさなくても、お互いの心の中が透けて見えるような気がした。