なんでこんなときに、一之瀬くんのことを。


わたしは、悟られないように笑ってみせる。

でも、万里くんにはそれが空元気だとバレバレだった。


「無理して笑わなくてもいいから。なにかあるなら、オレに言ってみな?彼氏なんだから」


万里くんは、わたしと隣になるようにベッドに腰かけると、優しく頭を撫でてくれた。


「うん、…そうだね」


万里くんに、一之瀬くんのことは話せない。

でも、由奈のことなら――。


「…わたしの友達の話なんだけどね」


わたしは、自分のことをとある友達の話として万里くんに話してみた。



「そのコには、昔からの親友がいるんだって。なんでも話せる仲らしいんだけど、その親友に実は彼氏がいるってことを最近知ったみたいで――」


その彼氏というのが、そのコが少し前から気になっていた人だった。