千隼くんはフッと笑みを浮かべて翔吾からの返球を受け取った。


「アイツ、緊張って概念がないんだろうな」


先輩の言う通り、千隼くんはまるで練習中かのような身軽さでポンポン投げていく。


だけどその1球1球の球威は打者を圧倒し、バットに当てさせなかった。


1度もバットに当てることなく、3者連続三振。


「エグすぎんだろ…あいつ…」


「あんなピッチャー見たことねぇよ…」 


味方もドン引きする異次元っぷりを見せつける千隼くん。


当の本人は歓声も拍手も気に留めず、飄々としてベンチに戻ってくる。


練習試合よりも遥かにパフォーマンスがいいあたり、努力を積んだのがよくわかる。


「千隼、ナイスピッチ」


「おぅ。次の打者どうやって抑えようか」


「今日ストレート超良いからストレート主体でいこう」


ベンチに戻ってくるなり、息をつく間もなくバッテリー会議を始める千隼くんと翔吾。


集中しきった二人には、誰も寄せつけない圧倒的なオーラがある。