エースナンバーを背負う。


俺に務まるんだろうか。


突然投げられなくなるかもしれない俺に?


過去に苛まれ、振り切れていない俺に?


…俺は…“1”を背負える自信がない。


もちろん、練習はしてる。


変化球も精度を上げれるよう努力している。


でももし、一昨日みたいに声が聞こえてきたら…?


あれを無視できる力は俺にはない。


まるで、自分が自分じゃない感覚に襲われるんだ。


ポンポンっ


背番号を見つめ立ち尽くす俺の背中が叩かれる。


横を見ると、背番号“2”を持った翔吾が真顔でいた。


「心配いらねーよ。俺がリードしてやるからよ」


目は合わせてこなかったけど、俺の内面を見透かしているような言葉だった。


「……。ほんっと、いつでもどこでも偉そうな奴だなお前は」


「あん?嬉しいクセに」


「嬉しかねーよ」


一時の間。


そして、翔吾は言った。


「お前が何抱えてるか知んねぇけどさ、俺のこと信じて投げてこいよ。どんなクソボールでも捕ってやっからよ」


「…おう」


拳と拳がコツンとぶつかり、そして弾けた。