俺には、愛された記憶がない。


物心ついたときからいつも疎ましがられていた。


それでも…母親の見せる笑顔は好きだった。


もちろん、俺に向けての笑顔じゃない。


兄貴に向けての笑顔だった。


楽しそうに笑う母親。


俺はそれを横目で見ながら、一人で遊ぶのが当たり前の日常だった。


でも…。


いつか俺を見てくれるんじゃないか。


いつか俺にも笑いかけてくれるんじゃないか。 


幼いながらにそう思ってた。


だけどいつしかそんな淡い期待なんて消え去り、兄貴への恨みだけが残ったんだ。


兄貴さえいなければ俺だって母親と楽しく過ごせたかもしれないのに。


生まれてくる順番が違ったばかりに。


だから兄貴が嫌いだった。


正直、兄貴が死んだとき、これで俺も愛してもらえると思った。