「わっ、ごめん!スマホとってくるから先準備してて」


スマホは更衣室に置いたままだ。


自分の準備の悪さに呆れながら慌てて更衣室へ戻る。


女子マネ用の更衣室は部室棟の最上階の奥にあって、男子運動部のマネはそこで着替えることになっている。


ギギギッ


ボロい木製のドアを開け、更衣室に入る。


「…あ……」


中には華がいた。


あの一件以来目も合わせなくなったのに、更衣室で二人きり。


気まずい空気に耐えきれず、急いでスマホを取り出して更衣室を出ようとノブに手をかける。


「待ちなさいよ」


高圧的に引き止められ、ビクッと肩が跳ね上がる。


「な…何?」


もう華はなにもしてこない。


そう言い聞かせてもトラウマはそう簡単に消えたりしない。