千紘は、そんな俺を温かく受け入れてくれた。


嬉しかった。


幼少期から、ありのままの俺を受け入れてくれる人なんていなかったから。


皆兄貴だけを見て、出来の悪い俺なんて見てくれなかった。


最初は初恋の人に雰囲気が似てるっていう理由で千紘に近づいた。


だけどその瞬間、“水原千紘”に恋に落ちたんだ。


でも。


千紘は俺なんて眼中にない。


千紘には忘れられない人がいて、今でもその影に恋い焦がれ、苦しんでいる。


たまに感じることがある。


俺とその人を重ね合わせてるんだろうなって。


俺と話してる途中にふと悲しい顔をして、空想の世界に逃げていく千紘を何度も見た。


そのたびに、俺にはどうしようもないことなんだと痛感させられる。


それでもいい。


それでもいいから俺は千紘の側にいたい。


振り向いてくれなくてもいいから。


俺はあいつが好きなんだ。