真っ先にマウンドへ駆け上り、千隼くんを抱きしめる翔吾。


そこへ、北野ナインと、ベンチを飛び出していった選手たちが重なり合う。


もみくちゃにされながら、その真ん中で人差し指を天高くつきあげる千隼くんは、誰よりもカッコよくて、眩しかった。


「勝ったんだ……」


私たち、勝ったんだ…。


夢が、叶ったんだ……。


ツラかった。苦しかった。


それでも、必死に野球部を守ってきた行為が、報われたんだ…っ。


いろんなことがあって、一度はバラバラになった野球部がひとつになって、やっと甲子園に行けるんだ…。


長い長い1年だった。


「よく頑張ったな」


「監督…」


監督に肩をポンッと叩かれ、堪えていた涙がとめどなく溢れてくる。


「大変な思いをさせて悪かった」


「そんなこと…」


「あと1ヶ月、アイツらのことをよろしく頼むな」


「はい…っ」


涙を落とさぬよう見上げた空は、過去一番に青かった。