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初戦をコールドゲームで勝ち、勢いに乗った私たちは危うげなく準決勝まで勝ち上がってこれた。


去年は強豪光西相手にノーヒットノーランを達成して一躍有名になった。


今年も光西との対戦で、去年とは一転して乱打戦だった。


火力マックスの光西打線に捕まり、千隼くんは自己ワーストの11失点。


しかし、味方打線はそれを更に上回る爆発力で13得点。


見事勝つことができた。


4番を任された翔吾は満塁ホームランと3ランホームランの2HR、千隼くんは6打数6安打を打つなど、チームの要がバットで魅せた。


光西に打ち勝ったことが話題になって注目を浴びる中、決勝戦の相手が決まった。


去年敗れた鶴海高校。


また、鶴海との決勝戦だ。


準決勝の結果を見て対戦相手が分かった時の千隼くんの表情が忘れられない。


ずっと強気な態度で試合に出続けていたのに、そこには陰りがあった。


9回2死からサヨナラ負けした苦い記憶が蘇ったのかなと思ったけど、それだけとは思えないほどの暗い表情だった。


すぐさま翔吾が駆け寄ってヒソヒソ話をしていたことも私の心に突っかかっていた。


だけど、何かあるのか聞いてもはぐらかされるだけで、不安は増大していったんだ。