「私…何も知らずに無神経なことばかり……」


「気にすんな。むしろ、あぁいうふうに言ってくれて嬉しかった。ありがとな」


爽やかな笑顔を向けてくれる千隼くん。


私とは大違いだな…。


過去をいつまでも引きずらず、力に変えて頑張っている。


お母さんの笑顔を取り戻すために甲子園に行かなきゃいけない、か…。


千隼くんはどれだけ重たいものを背負って生きてきたんだろう。


「…なんか、自分が情けなくなってきちゃった」


「なんでだよ」


「…私も大切な人を亡くしたの。その人のことが忘れられなくて、今でもずっと引きずってる。だけど千隼くんは違うでしょ?前を向いて努力してる」


朝陽くんの幻影を感じては思い出し、何をするにも朝陽くんを思い浮かべる私とは違う。


私も千隼くんを見習わなきゃいけないね…。


「もしかして、千紘が甲子園に行きたいのってその大切な人絡み?」


「…うん。ごめんね、こんな理由で」


嘘をついても仕方ない。


千隼くんが自分の過去を話してくれた以上、私も千隼くんにきちんと向き合わなきゃいけない。