なのにどうして自分を卑下して自信なさげにするんだろう。


どうして実力が無いと言い切ってしまうんだろう。


私はそうは思わないのに。


「ね、千隼くん。ここのストラックアウトでパーフェクトを出した人は甲子園に行けるんだよ。そういうジンクスがあるの」


「……へぇ…」


「だから…さっきのお願い、考え直してくれないかな…?」


これが言いたかった。 


だからわざわざストラックアウトをやってもらった。


バカなことしてるなーって自分でも思ってるけど、放っとけなかった。


何かに苦しんでいる千隼くんを見て見ぬふりすることはできない。


「……帰ろう。家まで送る」


重たい空気が私たちの間に流れる。


バッティングセンターを出てもまだ雨は上がっていなかった。


むしろさっきよりも強い雨が降っている。


ザァァァ……

ザァァ…

パチパチパチパチ…ッ


雨がアスファルトに叩きつけられる音しかしない、とても静かな夕刻。


「…あの…。ごめんね…。余計なこと言って…」 


真っ黒いアスファルトが大量の雨を弾く。


「違う。千紘は何も悪くない」


「千隼くん…?」


何か迷っているのか、歩みが遅くなり、やがて完全に止まってしまった。


「俺の情けない話、聞いてくれる?」


「もちろん」


目を見て力強く答えると、千隼くんはまたゆっくりと歩き始めた。