「あっ!」


真子ちゃんが声を上げたその視線の先に、ボールが当たって痛がっている部員の姿。


「私が行ってくるよ!」


真子ちゃんは手が離せそうにないから、私がコールドスプレーを持って部員に近づく。


ドクンッ


この人は赤坂くんじゃない。


分かってるのに心臓が激しく暴れだし、近づくことが怖くなる。


「このあたりスプレーしてほしいんだけど」


「あ……う、うん…」


大丈夫大丈夫。


赤坂くんは今日はいない。


だから大丈夫。


「大丈夫?手が震えてるけど」


「え…と、そうかな?全然平気だよ?」


しっかりしなきゃ。


頭では分かってるのに、拒絶反応が出てしまう。


自分が思っていた以上に男性に恐怖を感じている。


頑張るって決めたんだから頑張れ、私。


皆を甲子園に導くんだから。


絶対に夢を叶えるんだから。


頑張れ、私。