私一人の犠牲と、一生懸命やってる多くの部員の犠牲。


どっちを払うかなんて考えるまでもないでしょ…?


「…また千隼かよ。アイツはもう戻ってこねぇよ。いい加減諦めて自分を大事にしろよ」


「千隼くんは戻ってくる。私は諦めない」


華なんかに野球部の邪魔はさせない。


そう決めたんだ。


絶対に皆で甲子園に行く。


「だからお願い翔吾。監督には言わないで」


「本当に大丈夫なんだな?」


「…うん」


怖くない怖くない。


絶対大丈夫。


そう言い聞かせてグラウンドへ足を進める。


「……ありがとな、千紘」


「…その代わり、絶対甲子園に行こうね」


試すように言うと、翔吾はフッと笑った。


“うん”とも“ううん”とも言わなかった。


それは、これからの厳しい現実を知っている翔吾らしい沈黙だった。