「千隼くん」
「ん?」
すべて打ち終えた千隼くんに声をかける。
千隼くんは、真っ白いタオルで汗を拭いながら反応を示してくれた。
「…一緒に甲子園…目指そ」
「え…?」
千隼くんの瞳が揺れ、動きが止まる。
いきなり何だって思われてるかもしれない。
でも、私は甲子園に行きたい。
「打ってる間に考えてたの。私はどうしても甲子園に行きたい。お願い千隼くん。私を甲子園に連れてって…?」
千隼くんとなら目指せる。
「甲子園に行かなきゃいけないなら、そのついででいいから…」
千隼くんは何も言わなかった。
私からもこれ以上は何も言えなくて、気まずい沈黙が流れる。
迷惑だったかもしれない。
所詮私は過去の恋愛感情を引きずって甲子園に行きたいと思っているだけ。
朝陽くんの夢舞台に行けば、朝陽くんに会えるんじゃないか。
そんなふうに思ってるだけにすぎない。
本気で目指してる選手に失礼な動機だっていう自覚はある。
「…ごめんね。やっぱり忘れて」
私は間違ってる。
こんな不純な動機でお願いするなんてダメだね…。



