「…もう、俺のことは放っといてくれ。お前に俺の気持ちも今の野球部の状況も分かんねーよ」


翔吾は諦めたようにそう言って教室を出ていってしまった。


「意地になってるだけだよ。あいつはそのうちケロッと戻ってくる。だから安心して」


夏菜は気に留めていないようだ。


夏菜と翔吾の関係性があるからこその言い争いだったのかもしれない。


「あいつの負けず嫌いは異様だからね。何が何でも甲子園に行こうとすると思う。絶対大丈夫だよ」


「翔吾のこと信用してるんだね」


「まぁね。約束もしたしね」


「約束？」


「そ。アイツが入院してる時にいろいろ話したの。で、告白もされたから、甲子園に行けたら付き合ってあげることにしたの」


…マンガじゃん…。


二人がそんな約束をしてたなんて知らなかったな。


「アイツは約束を守る男だよ。だから翔吾のことは気にしなくて大丈夫。どうしても困ってるならいつでも私に相談して？」


「夏菜…。ありがとね。私もう少し頑張るよ」


夏菜がこんなに真剣にぶつかってくれたんだ。


私も千隼くんともう一度向き合う。


千隼くんから逃げない。