カキーーンッ!


マシン音に負けない快音が響く。


「バッティングも上手いんだね。それに左打ち…」


バッティングフォームは似ていない。


でも…朝陽くんと同じ右投げ左打ちだ。


右投げ左打ちの選手なんてたくさんいる。


別に珍しいものじゃない。


だから何の偶然でもないのに、頭では理解してるのに、重ね合わせてしまう自分がいる。


朝陽くんは、投げるだけじゃなくて打つ方もすごかったらしい。


千隼くんの中学時代はどうだったんだろう。


朝陽くんみたいにスターロードを歩いていたのかな。


でももしそうなら、こんな公立高校に来ないよね…。


なんでこんなに上手い人が強豪校に行かなかったんだろう。


ううん。


それ以前に、こんなに上手いのにどうして野球が好きじゃないんだろう。


前を見据えてバットを振る顔は真剣そのもので、とても嫌いなことをやっているようには見えない。


“別に好きじゃねーよ”


その真意はいったい何だろう。


千隼くんには千隼くんの過去があるのかな…。