ぽつりと漏らしたその声は、弱々しかった。


熱くなっていた心がスッと冷えていく。


「……俺はもう野球はやりたくない。前にも言ったろ?野球が嫌いだって」


「そんな…」


どうして……。


何があったの…?


「私…千隼くんのことを支えたいって思ってる。私じゃ力になれない…?私、千隼くんの力になりたいよ…」


「今は野球をやりたいと思わない。千紘と話したいとも思わない」


…っ!?

 
「もう、なかったことにしよう。なにもかも。俺は全部忘れたい」


「そんな…。どうして…?私、何かした?嫌なところがあるなら直すから。だからそんなこと言わないでよ…っ」


お願い、千隼くん…。


「………ごめん。じゃあな」


「待ってよ千隼くん…っ」


千隼くんは振り返ることなく教室へと戻っていった。


「私…千隼くんのことが好きだよ…」


届かなかった。


私の声も想いも、千隼くんには届かなかった。


気づくのが遅かったんだ。


もっと早く自分の気持ちに気づいていれば。


バカだよね、私……。


ホントにバカだ…っ。