フラッシュバックした記憶と現実が混同して、何が何だか分からなかった。


ただ、血の海を見た記憶が鮮明に蘇って怖かったんだ。


「……トラックに轢かれたの。その時も、さっきの翔吾みたいに血まみれだった…」


道路の真ん中にいる朝陽くん。


そしてそこに突っ込む大型トラック。


大好きな人が撥ねられ、宙を舞ったあの夜を思い出してしまった。


無意識のうちに消した記憶を…。


「……変なこと聞いてごめん。思い出したくなかったよな」


「…ううん…。いいの。いつかは乗り越えなきゃいけないことだから…」


「…そっか」


これ以上話すことがなく、無言の時が流れる。


…もう、忘れるって決めたんだから。


前を向くって決めた。


だから…あの記憶には蓋をするんだ。