長かった合宿は終わり、あっという間に夏休みも終わってしまった。


野球に追われ、夏らしいことはなにもできなかった。


海にもプールにも行けなかったし、花火大会やお祭りだって行けなかった。


だけど、悔いはないくらい全力で向き合えたし、充実した夏休みだった。


朝から晩まで厳しい練習に明け暮れる毎日。


体力自慢の翔吾が弱音を吐くほどの厳しい環境だった。


それでも努力をやめなかったのは、夏の悔しさがあるから。


あと一歩のところで甲子園を逃した悔しさはどんなに練習を重ねたって消えない。


次こそ甲子園を掴み取るんだ。


「もっと腕振れば?アイツならどんな球でも捕れるから」


千隼くんが堀田くんにアドバイスを贈る。


たしかに、翔吾はよっぽどの暴投じゃない限り絶対にボールを後ろに逸らさない。


千隼くんがそんな翔吾を信頼しきっているのは誰が見ても明らかだ。