気がついたらど真ん中に甘いボールを投げていて、完璧な打球が頭上を越していった。


目の前で呆然とする翔吾。


振り返れば立ち尽くしている先輩たち。


俺が弱かったせいで、全員の期待を裏切ることになった。


部員の期待、学校全体の期待、世間からも期待してもらえて。


多くの人を、俺の過去のトラウマのせいで裏切った。


「…何があったのかって聞いてんだよ。あぁなった以上、お前だけの問題じゃねーだろ」


マウンドは孤独な場所だ。


翔吾はそれを分かって、少しでも寄り添おうとしてくれる。


いい奴だな、とは思ってる。


いろんなキャッチャーと組んできた中で、1番やりやすいのは翔吾だ。


「お前が何を抱えてるか知らねぇけど、俺はそれを含めてお前と組みたい。一緒に乗り越えさせろよ」


…翔吾らしいな…。


こいつになら、過去の話を全部してもいいかもしれない。


その情熱に揺れ動かされ、そう思った。


「…だいぶ長くなるから、どっか飯でも行こうぜ」


チラッと翔吾を見て誘ってみると、翔吾は嬉しそうに笑みを浮かべた。


何があってもこいつを信じよう。


こいつを頼ろう。


そう思った瞬間だった。