翔吾が声を荒げて言ったその言葉こそが、翔吾の本心だった。


“俺を頼れ”


翔吾が千隼くんに怒っていた理由はそれだった。


千隼くんが一人で暴走するのをやめさせたかったんだ。


だけど、翔吾の性格上言葉が悪くて喧嘩になって…。


千隼くんには本当の気持ちが伝わらなかった。


だから千隼くんも怒って喧嘩が発展して…。


「ホントはお互いのこと大好きじゃん」


やっぱりこのふたりは最高のバッテリーだ。


「…なんだよ急に。気持ちわりぃな」


目を泳がせ、分かりやすく動揺する翔吾。


翔吾らしいな…。


真っ直ぐで、信頼関係を大事にする男らしいところ。


不器用で思いを伝えるのが下手なところ。


「お互い、お互いの気持ち分かったでしょ?翔吾は千隼くんのことを心配してて、千隼くんは翔吾のことを信頼してる。心配の形も、信頼の形も、人それぞれ違うけど、思いは一緒だよ?」


上手く伝わらなかっただけで、このふたりにはお互いを思う気持ちがちゃんとある。


あんな風に負けて、平静ではいられなかったからこそ、喧嘩になっちゃっただけだ。


「じゃあ私は帰るね。ちゃんと仲直りするんだよ?明日の練習でギクシャクしてたら許さないからね」


そう言い残してベンチを去る。


こっそり振り向いて様子を見てみてら、きちんと話をしている素振りだった。


あのふたりはもう大丈夫だ。


今回の衝突で絆はより強固なものになった。


そんな気がするんだ。