そんな心配をよそに、千隼くんは簡単にツーアウトをとってしまった。


「あとひとり!」


ベンチ入りメンバー全員がベンチから身を乗り出して、歓喜の瞬間を今か今かと待ち構えている。


異変を感じたのは、3人目へ投じた初球。


まるで今までの好投とは別人のような大暴投をしたんだ。


見たこともない大暴投に、球場の空気が一変した。


たった一球の暴投。


だけれど、この暴投の持つ意味は計り知れないほど大きかった。


ストライクゾーンから大きく逸れたボール球ばかりで、フォアボールを出してしまった。


ストライクが入る気配は全く無く、本当に別人が投げているようだった。


「…どうしたの……?」


あまりの異様さにベンチもスタンドもザワメキが収まらない。