「千隼くん……」


暗い顔をしていた。


試合前、チラッと覗かせた本音。


あの言葉は、千隼くんのSOSだったんじゃないか。


根拠はないけど、なぜだかそう思ったんだ。


さっきまで明るく輝いてた見えたマウンドは、今では大きな雲が影を落としている。


大丈夫…だよね…?


千隼くんは大丈夫。


だけど…漠然とした不安が頭を支配する。


本当にあと一歩なんだ。


あと3人。


あと3人抑えたら、甲子園へ行けるんだ。


「ふぅ……」


見てるだけの私が緊張して見てられない。


歓喜の瞬間がすぐそこまで来ていると考えたら、ワクワクが止まらない。


それと同時に、万が一のことが過ぎって怖いんだ。